胸キュン少女漫画のような展開が魅力のドラマ『匿名の恋人たち』。
現実味はやや薄めですが、深く考えずに気楽に楽しめるラブストーリーです。
重たい設定を抱えた登場人物たちが、少しずつ心を通わせていく様子が、やさしいトーンで描かれています。
壮亮の過去とトラウマ
壮亮は、自分のせいで白血病の兄が亡くなったと思い込み、その過去の経験から、人に触れられなくなるトラウマを抱えています。
誰かに触れられると大量の汗をかいてしまうため、アタッシュケースには何枚ものワイシャツを入れて持ち歩き、触れられるたびにトイレで着替える生活。
恋愛どころか、人と深く関わること自体を避け、心を閉ざして生きている青年です。
そんな重い背景とは対照的に、トイレでワイシャツを着替えるシーンはどこかコミカルに描かれていて、作品全体の空気を重くしすぎない工夫が感じられます。
ハナの視線恐怖症
イ・ハナは子供の頃から視線恐怖症を抱え、人の目を見ることができません。
その影響で、ショコラティエの大会ではスピーチができず失敗してしまいます。
しかし、その大会でハナの才能を見抜いた審査員・黒岩は、彼女の腕を認め、弟子として迎え入れます。
なぜハナが視線恐怖症になったのかについては詳しく描かれていないので、その点は少し謎が残りますが、だからこそ彼女の繊細さが際立って見えるようにも感じました。
運命のすれ違い
ハナは以前、車に轢かれそうになったところを、ある人物に助けられたことがあります。
その人物こそが壮亮ですが、二人はお互いにその事実を知りません。
ハナは命を救ってくれたその人に恋をしますが、居場所を突き止めた先にいたのは別人。
勘違いから、その人に想いを寄せてしまいます。
出会った当初の壮亮とハナは、お互いに特別な感情もなく、正直どうでもいい存在でした。
そこから物語が動き出していくのが、少女漫画のような王道のラブストーリーです。
ハナの成長と「謎のショコラティエ」
黒岩のもとで修業を積んだハナは、自分のチョコレートを「謎のショコラティエ」の作品として、黒岩の計らいで店に並べてもらうことになります。
しかし、黒岩の死後、その店の新オーナーとして現れたのが壮亮でした。
再会した二人は、かつて事故の場面で出会っていたことを知らないまま、再び関わることになります。
ハナは自分が「謎のショコラティエ」であることを隠し、黒岩の店で働き始めます。
少しずつ近づく二人の距離
不思議なことに、ハナは壮亮の前では自然に目を見て話すことができ、壮亮もまた、ハナの手に触れても平気でいられます。
ハナは「好きな人の目を見て話せるようになるために」
壮亮は「人に触れても平気になるために」
二人はお互いを“練習相手”として、少しずつ距離を縮めていきます。
その関係はやがてただの練習相手ではなくなり、お互いに特別な感情を持つようになります。
まとめ
少女漫画のような胸キュンシーンが随所に描かれ、現実味は薄め。でも、それを楽しみたい人にはたまらない作品になっています。
トラウマを抱える2人ですが、重くなりすぎず、純粋に2人の恋愛を楽しめるのが『匿名の恋人たち』の魅力です。
深刻なトラウマを抱えた二人が、少しずつ心を開いていく過程を、やさしい気持ちで見守りたい人におすすめの作品だと思います。

