※本記事は、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第80話のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
『ばけばけ』は、髙石あかりさん主演で描かれる連続テレビ小説です。
明治期の松江を舞台に、言葉や文化の違いを越えて心を通わせていく人々の姿を、
温かなまなざしで描いています。
第80話では、サワとトキの友情に静かなすれ違いが生まれ、
それぞれが立つ「川の向こう側」という言葉の意味が印象的に描かれました。
また、おなみの身請けという大きな転機を通して、
変わることへの不安と、それでも一歩踏み出す勇気が胸に残る回となっています。
本作はNHK総合にて放送中です。
最新の放送予定やキャスト情報は、
公式番組ホームページをご確認ください。
第80話あらすじ|サワとトキ、すれ違う友情
白鳥倶楽部での再会と、よそよそしいサワ
サワ(円井わん)は、教員資格を取得するため白鳥倶楽部で勉強に励んでいました。
そこへトキ(髙石あかり)が訪れますが、サワの態度はどこかそっけなく、以前のような親しさは感じられません。
山橋(柄本時生)や土江(重岡漠)、門脇(吉田庸)に話しかけられている間に、
サワはひとり倶楽部を出て行ってしまいます。
「正規の教師になって、誰にも頼らずに」
一度は立ち去ったサワでしたが、再び戻り、
「新聞みたよ。街もすごいことになってる」とトキに声をかけます。
松野家やヘブン先生の様子について話しながら、
「偉人さんと一緒になると大変なのかと思っていたけれど、うまくいっているみたいで良かった」と語るサワ。
そして彼女は、
「私もじきに出るけん。正規の教師になって。誰の力も借りずに、誰にも頼らずに」
と決意を口にし、再び勉強へと戻っていくのでした。
トキの不安と、周囲の気遣い
ヘブンと梶谷が感じたトキの異変
その頃トキは、ヘブン先生からアルファベットを教わっていました。
元気のない様子を見たヘブンは「心達者ない?」と声をかけますが、
トキは笑顔で「はい」と答えます。
その様子を見ていた新聞記者・梶谷は、
「おトキさんの記事を書くのは、しばらく難しそうですね」とフミや司乃介に伝えました。
フミは「サワちゃんは一番の友達だけんね」と、トキの心を案じるのでした。
おなみの旅立ちと、サワの揺れる心
身請けを受け入れたおなみ
翌朝、サワのもとにおなみと福間が挨拶に訪れます。
おなみは身請けを受け入れる決断をしていました。
「怖かった。今も怖い。でも、ここを出たら何かいいことがある気がして」
そう語るおなみに、サワは「おめでとうございます」と頭を下げます。
「無理に出んでもええ」おなみの言葉
いつものように人生訓を語ろうとするおなみの言葉を、サワは「もういいですけん」と遮ります。
川の方を向いたおなみは、
「マッチョれ川の向こう側!」と大声で叫び、
「無理に出んでもええ。そん時が来たら、心が決めてくれるけん」とサワを抱きしめました。
「なら、達者で」――そう言い残し、おなみは新しい人生へと旅立っていきました。
錦織と庄田、過去がつながる再会
後任教師として現れた庄田多吉
一方、錦織(吉沢亮)は知事(佐野史郎)から、
自分の後任となる英語教師の名前を知らされます。
その人物は、彼がよく知る庄田多吉でした。
庄田は山橋薬補の白鳥倶楽部(勉強サロン)にも姿を見せ、サワに挨拶しますが、態度は冷ややかです。
「ちょっと変わった子だ」と言われたサワは、
「かわっちょりませんが」ときっぱり言い返すのでした。
錦織の同級生庄田
庄田は、錦織が松江中学に通っていた頃の同級生でした。
「友達ですか?」と問われた錦織は、
「東京でも一緒でしたし」と曖昧に答えます。
庄田が上に来ていると知らされても、
錦織は「いいえ」と会うことを拒むのでした。
すれ違う二人の心
居留守のサワ、訪ねてきたトキ
ほっかむりをしたトキは、サワの家を訪ねます。
しかし出てきたのはサワの母親で、サワは不在だと告げられました。
トキは「ただ応援しちょると伝えたくて」と言い残し、その場を後にします。
実はサワは家におり、居留守を使っていたのでした。
笑顔の裏に残る、寂しさ
帰り道、子どもたちに「スキップができるようになった」と声をかけられ、
トキは一緒にスキップをします。
しかしその表情は、どこか寂しげでした。
親友との距離が、静かに広がっていることを感じさせるラストとなりました。
第80話の感想|すれ違う友情と、それぞれの選んだ道
サワにとって、トキがヘブンと結婚し、穏やかに暮らしている姿は、
本来なら素直に喜ばしいことだったはずです。
しかし、生活する世界が変わってしまったことで、
二人の間には目に見えない距離が生まれてしまいました。
新聞で取り上げられ、街の人気者になっていくトキを見て、
サワは次第に「遠い存在」になってしまったと感じていたのではないでしょうか。
そこには祝福の気持ちと同時に、
わずかな嫉妬や劣等感のような感情も混ざり、
以前のように素直に接することができなくなっていたように思えます。
一方のトキは、自分自身は何も変わっていないつもりでいます。
それでも周囲の態度は大きく変わり、戸惑いを覚えていました。
親友であるサワからも距離を置かれてしまい、
その寂しさはひとしおだったことでしょう。
ただ、トキ自身はサワに何かをしたわけでもなく、
どうすれば関係を修復できるのか分からないまま、
ただ時間だけが過ぎていく――そんな切なさが伝わってきました。
今回描かれたすれ違いは、トキではなくサワ自身の心の問題なのだと思います。
教師になるという夢を叶え、
生活にも心にも余裕が生まれたとき、
サワはきっと再びトキに優しく向き合えるようになるでしょう。
それまでは、自分の道を信じて進んでほしい――
そう願わずにはいられませんでした。
一方で、おなみは念願の身請けが決まり、
長く暮らした遊郭を出ることになりました。
変わることは不安で、怖さもあります。
それでも「一歩踏み出せば、何かいいことがあるかもしれない」
そう思えたおなみの心の変化は、とても尊いものでした。
その勇気を持てたこと自体が、
彼女にとって大きな成長だったのではないでしょうか。
これから先、おなみに穏やかで幸せな生活が待っていることを、
心から願いたいと思います。
第80話の考察|「川の向こう側」が象徴するもの
第80話で何度も語られた「川の向こう側」という言葉は、
単なる場所ではなく、人生の転換点や生き方の違いを象徴しているように感じました。
結婚、身請け、職業、身分――。
この物語において川は、「今いる場所」と「これから進む世界」を分ける境界線です。
おなみはその川を渡る決意をし、
トキはすでに川の向こう側へ渡った存在となりました。
そしてサワだけが、まだ川の手前に立ち尽くしているのです。
サワは決して臆病なのではありません。
彼女は自分の力で教師になるという明確な目標を持ち、
誰にも頼らず生きることを選んでいます。
だからこそ、結婚という形で人生を切り開いたトキの生き方を、
無意識のうちに「自分とは違う道」として線引きしてしまったのでしょう。
祝福したい気持ちがあるからこそ、
同時に生まれてしまう焦りや劣等感。
その結果、サワの態度が硬くなり、
親友との距離を生んでしまったのだと感じます。
トキ自身は、結婚しても、新聞に載っても、
自分は昔と何も変わっていないと思っています。
しかし、周囲の人々は彼女を
「偉人の妻」「有名人」として見るようになりました。
その視線の変化こそが、
トキとサワの距離を広げる一因となったのではないでしょうか。
変わったのはトキではなく、
トキを取り巻く世界だったのです。
サワがトキの訪問に応じず居留守を使った場面は、
冷たさではなく、彼女の未熟さと優しさの裏返しだったように思えます。
会えば、笑ってしまうかもしれない。
本音をこぼしてしまうかもしれない。
だからこそ、今は会えなかった――。
その姿は、決して友情を捨てたわけではないことを物語っています。
今はすれ違っているトキとサワですが、
二人の友情が壊れたわけではありません。
それぞれが別の岸で歩みを進め、
やがて同じ高さで言葉を交わせる日が来るはずです。
第80話まとめ|それぞれの場所で、未来を選ぶとき
第80話では、サワとトキの友情のすれ違いが、
決して衝突ではなく、環境や立場の変化によって生まれる静かな距離として描かれました。
変わったのは人の心というよりも、
二人を取り巻く世界と、見られ方だったのかもしれません。
教師になるという夢を追い続けるサワ。
偉人の妻として注目を集めながらも、変わらぬ自分であろうとするトキ。
同じ場所にいながら、立つ岸が違ってしまった二人の姿が胸に残ります。
一方で、おなみの身請けは「変わること」への恐れと希望を象徴する出来事でした。
川の向こう側へ渡る勇気は、誰にでも必要なものではなく、
心が決めたときにこそ意味を持つのだと、静かに語りかけていたように思います。
今は離れて見えるサワとトキですが、
それぞれの場所で歩み続けた先に、再び心を通わせる日が訪れるはずです。
第80話は、人生の選択に正解や早さはなく、
「どこに立つか」よりも「どう生きたいか」が大切なのだと教えてくれる回でした。
前回・第79話の振り返り
第79話では、新聞連載をきっかけに松野家とヘブン先生の存在が町に広く知られ、
トキの立場が少しずつ変化していく様子が描かれました。
称賛と好奇の視線を向けられる中で、
喜びと同時に戸惑いを抱くトキの姿が印象的な回でもあります。
一方で、サワやおなみ、サロンに集う人々の人生も静かに動き出し、
それぞれが「これからの生き方」と向き合うきっかけとなりました。
▶︎ 前回の物語はこちら
『ばけばけ』第79話ネタバレ感想・考察
