『シナントロープ』最終回感想[ネタバレ注意]|静かに明かされる真実がいちばん怖い

2025年ドラマ

※ネタバレ注意:最終回の内容に触れています

『シナントロープ』最終回感想|静かに明かされる真実がいちばん怖い

静かに仕組まれた一通の脅迫状が、すべての引き金になる

「シナントロープ」の最終回は、派手な解決ではなく、
事件の真相に気づいた人の心にだけ静かに残る怖さ、そしてそれがずっと消えない結末だった。

この物語の鍵は、初回で示された折田に届いた一通の脅迫状だった。

「今度こそ殺しに行く。シマセゲラ」

この言葉は、事件が衝動や偶然ではなく、誰かの意図によって始められていたことを示していた。

山で起きた誤解と、取り返しのつかない連鎖

水町を助けに来た都成は、山の中で龍二と出会う。

くるみの目出し帽を被っていたことで、誤解から追われ、刺され、捕まるという取り返しのつかない連鎖が始まってしまう。

龍二に問い詰められた都成は、当てずっぽうで口にした言葉によって、思いがけず真実を言い当てる。

やがて龍二自身が遺体を発見し、涙を流す。

疑念は確信へと変わっていく。

復讐も虚しく、命だけが失われる

山小屋では、折田が監禁した水町に過去の罪を語っていた。

復讐を試みた龍二は、折田を後ろから刺す。

そして、外へ連れ出すが、反撃に遭い、無駄に命を落とす。

誰も救われない連鎖が、ただ淡々と終わる。

折田が気づいた「始まりはもっと前だった」という事実

その後、折田は目出し帽を被った都成を見て、
彼を“シマセゲラ”だと思い込み、命乞いをする。

助けを呼ぶために差し出されたスマホが、
かつて、仕事の依頼と共に送りつけられてきたものだと気づいたとき、
折田は、自分が最初から何かの流れの中に置かれていたことを悟る。

「あの時から、始まっていたのか」

その言葉が、この物語の核心だったように思う。

何も知らないまま、そこにいた存在

警察が山小屋に到着すると、そこにはまったく別の光景があった。

ギターを弾き、熱唱するくるみ。それをじっと見つめる刑事のシーンがコミカルだった。

くるみは「山小屋でオーディションがある」と呼び出され、
何も知らないままその場にいただけだった。

事件の中心で、最も無関係な存在が歌っているという皮肉が、強く印象に残る。

一年後、繁盛するシナントロープ

事件から一年。

都成は、かつてシナントロープで共に働いていたハシビロコウに呼び出され、再び店を訪れる。

そこは、事件当時とは違い、繁盛していた。

人が死に、人生が壊れるきっかけとなった場所でさえ、
日常は何事もなかったかのように上書きされていく。

ハシビロコウが語った「ただ一つの基準」

ハシビロコウは、静かに事件の真相について語り始める。

黒幕とは、

「この一連の事件で、最も得をした人物」

ではないか——それが、彼の考えだった。

都成は半信半疑のまま、その話を聞いている。

だが、ある行動をきっかけに、
疑いは否定しようのない確信へと変わっていった。

静かに理解してしまったという結末

都成は、折田のスマホだと思っていたスマホを取り出す。そして、一緒に写真を撮ろうと言って、彼女にスマホのカメラを向けた。

その瞬間、都成はすべてを理解した。

事件の真相に気づいたことで、胸に重さを抱える。
誰かの思惑や意図が静かに動いていたことに気づき、信じていたものとの間に距離を感じた。

事件の中心で何が起きたのか、何が変わったのか。
都成の心には答えの全ては残らず、ただ静かに重くのしかかる感覚だけが残った。
そして、日常の光景に目を向けると、世界は何事もなかったかのように続いている。
シナントロープは今日も賑わい、真実を知った者だけが抱える影と日常の無邪気さのコントラストが際立った。

都成は自宅で、5歳の頃に警察から表彰された記事を見つめる。
その記事のとなりには、同じ頃に監禁されていた少女のことが書かれていた。

 

 

 

前回(第11話)の感想はこちらから。

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