※本記事は、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第86話・第18週「マツエ、スバラシ。」の内容を含みます。
未視聴の方はご注意ください。
第86話では、松野家の借金完済という喜ばしい出来事の裏で、
町の視線が静かに、しかし確実に変わっていく様子が描かれました。
タエが口にした「奢れるものも久しからず」という言葉は、
トキの態度ではなく、人の評価が状況によって簡単に裏返る現実を示していたように思います。
本記事では、第86話のあらすじを整理したうえで、
奢っていないにもかかわらず誤解されてしまったトキの立場や、
町の噂、そしてヘブンの誠実さがどのように切り落とされていったのかを考察していきます。
『ばけばけ』第86話・第18週「マツエ、スバラシ。」あらすじ(ネタバレ)
タエの忠告と、穏やかな日常
物語は、トキがタエのもとを訪れ、ヘブンから預かった今月分のお金を渡す場面から始まります。
「奢れるものも久しからず。気をつけるのですよ」
タエはそう言葉を添え、トキを気遣うのでした。
町の人気者となったトキ
買い物に出かけたトキは、町の人々から次々と声をかけられ、注目を集めます。
ほっかむりをしながらも、トキは変わらず愛想よく応じていました。
ヘブンの新たな執筆テーマ
錦織に次に書きたいテーマを問われたヘブンは、「虫」と答えます。
日本人が虫の声を愛でる感性の素晴らしさを語り、錦織も助手として意見を求められるのでした。
松野家、借金完済
ついに松野家の借金が完済され、家族と銭太郎を交えたささやかな祝いの席が開かれます。
その場を新聞記者・梶谷が訪れ、借金返済の経緯を取材。
翌朝の新聞には、ヘブン夫妻の記事が掲載されることになります。
庄田多吉の再出発
庄田多吉は、松江中学の英語教師として赴任していました。
結婚を申し込んで振られたことを語りつつも、教師としての決意を述べます。
その様子を見たヘブンと錦織は、どこか不安を感じていました。
広がる誤解と、走り去るトキ
再び買い物に出かけたトキは、自分の名前が書かれたうちわが焼かれているのを目にします。
「ラシャメンだったらしい」
借金返済のために妾になったのではないか――そんな噂話が聞こえてきます。
ラシャメンとは、妾を意味する言葉。
その言葉に耐えきれず、トキは逃げるように走り去るのでした。
『ばけばけ』第86話の感想・考察
タエの「奢れるものも久しからず」が示していたもの
タエの言葉は、結果だけを見れば現実になったようにも思えます。
しかし、トキは奢ってなどいません。
ヘブンの女中として働き、その稼ぎからタエの一家にお金を渡していたのはトキ自身です。
立場としては、支えられる側ではなく、支える側でした。
タエ自身、かつては裕福な暮らしを送り、夫の死をきっかけに没落し、物乞いをするほどの困窮も経験しています。
だからこそあの言葉は、トキの態度への忠告ではなく、順調に見える状況ほど脆いという、人生経験から滲み出た実感だったのだと思います。
事実と誤解のあいだで切り落とされた背景
新聞に書かれた「結婚によって借金が返済された」という内容は事実です。
しかし、その背景にあったトキの覚悟や、ヘブンの誠実さは、簡単に切り落とされてしまいました。
町の人々も、誰かを傷つけようとしていたわけではありません。
ただ物珍しく話題にし、悪い噂が出れば、それに花を咲かせただけ。
祝福も噂も、どちらも他人事だからこそ同じ軽さで語れる。
ヘブン一家は、町にとって「面白い話題を提供する存在」だったのだと思います。
好意から冷たさへ変わった町の視線
トキは、好奇の目にさらされること自体は覚悟していました。
女中になると決めた時点で、どう見られるかよりも、家を守ることを選んでいたからです。
けれど、お金のために結婚したと思われることだけは、どうしても受け入れられなかった。
耐えられなかったのは噂そのものではなく、昨日まで好意的だった視線が、突然冷たく変わったその落差だったのではないでしょうか。
一度受け入れられたあとに拒まれることは、人の心を最も深く傷つけます。
走り去ったトキが守ろうとしたもの
奢っていたのはトキではありません。
奢っていたのは、状況と、それを見る側の空気でした。
誤解を解くための言葉はなく、訂正記事を書くことでもありません。
この物語が描いているのは、説明ではなく、生き方と時間でしか覆せない現実です。
だからこそ第86話は、トキが走り去る場面で終わります。
まだ何も解決していない。
けれど、トキが何を大切にしているのかだけは、はっきりと浮かび上がった回でした。
トキが耐えられなかったのは、
自分が誤解されること以上に、
ヘブンが「お金で人を買うような人間」に見られてしまうことだったのだと思います。
まとめ
第86話では、松野家の借金完済という喜ばしい出来事の裏で、
新聞報道をきっかけに、町の視線が一変していく様子が描かれました。
タエの「奢れるものも久しからず」という言葉は、
トキの態度への忠告ではなく、
人の評価が状況次第で簡単に変わってしまう現実を示していたように思います。
事実と誤解が入り混じる中で、
トキが何を守ろうとし、何に耐えられなかったのか。
その答えが、走り去るラストに集約された回でした。
前後話のネタバレあらすじ
第86話の前後で描かれた出来事を振り返りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
番組情報
ドラマ『ばけばけ』は、
明治期の松江を舞台に、人と人との出会いや言葉のすれ違い、
そして時代の変化の中で揺れる心情を丁寧に描いた連続テレビ小説です。
実在の人物や出来事に着想を得ながらも、
本作はフィクションとして構成されています。
- 放送局:NHK 総合
- 放送枠:連続テレビ小説
- 放送時間:毎週月曜〜金曜 午前8時00分〜8時15分
※放送日時や内容は変更となる場合があります。
最新の放送情報は、
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