NHK朝ドラ『ばけばけ』は、明治時代の日本を舞台に、
作家・小泉八雲とその妻・節をモデルに、
異国から来た教師・ヘブンと、素朴でまっすぐな女性・トキが出会い、
文化や価値観の違いに戸惑いながらも「家族」になっていく過程を描いた物語です。
言葉の違い、生活習慣の違い、そして心のすれ違い――
小さな日常の積み重ねの中で、本音と嘘の間を行き来する二人の関係が、
丁寧に、やさしく描かれています。
作品の詳しい情報や放送スケジュールについては、
番組公式ホームページをご覧ください。
『ばけばけ』第75話ネタバレ感想|第15週(1月16日・金)放送回
山橋薬舗の別室で明らかになる、ヘブンの嘘
山橋薬舗の別室に隠れていたヘブンを、トキはついに見つけます。
そこで目にしたのは、慌てた様子のヘブンと、テーブルに並ぶ西洋料理でした。
ヘブンは、錦織との打ち合わせだと嘘をつきながら、山橋が料理人として腕を振るう「山橋西洋料理店」に密かに通っていたのです。
自分や母の料理は口にせず、西洋料理を楽しんでいたことを知ったトキの怒りは一気に噴き出します。
「なして内緒で?」怒りと疑念をぶつけるトキ
山橋に「どうぞお掛けください」と促され、トキは椅子に座ります。
それでも気持ちは収まらず、「なしてこげなところに?」とヘブンに問いかけますが、ヘブンは言葉を失ったまま黙り込んでしまいます。
トキはさらに踏み込みます。
「私や母の料理が口に合わず、松野家が嫌になったのではないか」
その言葉には、怒りだけでなく、拒絶されることへの不安がにじんでいました。
西洋料理の作法と、ぎこちない食事の時間
山橋が「まずはお食事を」と料理を運び、場の空気を変えようとします。
ヘブンはナプキンの使い方、ナイフとフォークの持ち方を、ぎこちなくも優しくトキに教えます。
トキは一口食べ、一瞬だけ「おいしい」と言いそうな表情を見せます。
しかしヘブンに「美味しい?」と聞かれると、意地を張るように「いいえ」と答えるのでした。
ヘブンが語り始めた“疲れ”の正体
トキの問いに、ヘブンは必死に否定します。
日本の暮らしが好きなこと、松野家のやり方が好きなこと、トキや母の料理が好きなこと――
それらはすべて本心だと伝えます。
しかし、続けてヘブンは胸の内を絞り出すように語ります。
新聞で持ち上げられ、「日本人みたい」「正座が上手」と褒められ続ける日々。
期待される存在であり続けることに、少しずつ疲れていたのです。
正座は痛い。
小骨はつらい。
それでも「家族がやっとできたから、裏切ることはできない」と、言い出せずにいたのでした。
「嘘をつかれる方が、もっと嫌です」
トキは、ヘブンの苦しさを理解しつつも、はっきりと伝えます。
「嘘をつかれる方が、もっともっと嫌です」
「先生だって、嘘が嫌いだと言っていたじゃないですか」
家族だからこそ言えなかった気持ちも、
家族だからこそ言うべきだった本音も、
その両方をトキは真正面から受け止めます。
謝罪と和解、そしてビーフステーキ

そこへ、山橋がビーフステーキを運んできます。
「なして今?」
思わず声を荒らげるトキ。
するとヘブンは、まっすぐにトキを見て言いました。
「もう嘘はつきません。疲れていました。ごめんなさい」
トキも、今にも泣き出しそうな顔で応えます。
「気づいてあげられなくて……ごめんなさい」
その言葉を聞いたヘブンも、同じように泣きそうな表情でトキを見つめていました。
「正直に話してくださって、ありがとうございます」
トキがそう言って頭を下げると、ヘブンも「はい」と短く答え、静かに頭を下げます。
「では、どうぞ」
ヘブンがそう言って食事を勧めます。
ビーフステーキを一口食べたトキは、
「美味しい」
と、可愛らしく微笑みました。
その様子を見て、ヘブンも山橋も思わず笑顔になります。
「また来ましょう」取り戻した日常
「また来ましょう。パパさん、ママさんも連れて」
ヘブンの言葉に、トキは
「はい」
と笑顔でうなずきました。
そのときトキは、ヘブンの口元に赤いものがついているのに気づきます。
「その赤いの、なんですか?」
それはケチャップでした。
「すみません」
そう言ってヘブンがナプキンで口元を拭くと、
「なんだ~!」
トキは大声で笑い、ようやく安心した表情を見せるのでした。
翌朝、ヘブンを見送るトキは、自分の頬を指さします。
戸惑いながらもヘブンはキスをし、トキは「いってらっしゃい。ヘブンさん」と送り出します。
机と襖の向こうで始まる、再出発
帰宅したヘブンを待っていたのは、立派な机でした。
松野家の引っ越し祝いとお礼として、司之介たちが朝から三人で作ったものです。
「これなら書けるか?」という問いに、ヘブンは「もちろん」と答えます。
襖を閉め、机に向かい、再び執筆を始めるヘブン。
第75話は、嘘のない関係と、本音を支え合う家族の形を静かに示しながら幕を閉じました。
『ばけばけ』第75話 感想
ヘブンの「疲れ」に気づいてはいたけれど
トキは、ヘブンが疲れていること自体には気づいていたと思います。
ただ、それがここまで深刻で、自分の気持ちを押し殺しながら耐えている状態だとは、思っていなかったのではないでしょうか。
「ちょっと無理をしている」
「慣れない生活で疲れているだけ」
その程度の認識で、本音を言えずに我慢しているとは想像できていなかったように感じました。
家族を失いたくないがゆえの嘘
ヘブンは、やっと手に入れた「家族」を失いたくなかったと話していました。
嫌われたくない、がっかりさせたくない、その一心で、自分の心に嘘をついてしまった。
それは悪意ではなく、むしろ誠実さから生まれた嘘でした。
しかし同時に、気持ちを正直に言えない関係性でもあったのだと思います。
本音をぶつけ合えたことの意味
今回、二人が本音をぶつけ合えたことは、とても大きかったと思います。
嘘をついたこと、気づけなかったこと、どちらかが一方的に悪いわけではなく、「言えなかった」「聞けなかった」関係そのものを見つめ直す回でした。
深刻な問題になる前に、正直な気持ちを口にする。
第75話は、その“練習”ができた回だったように感じます。
「ヘブン先生」から「ヘブン」へ
これまでトキは、どれだけ距離が縮まっても「ヘブン先生」と呼び続けていました。
それは敬意であり、同時に一線を引く呼び方でもあったと思います。
今回の出来事を通して、トキは「このままではいけない」「変わらなければならない」と感じたのではないでしょうか。
その象徴が、あれほど嫌がっていたキスを、自分から頬を指さして受け入れたことでした。
少しだけ前に進んだ二人
キスは劇的な変化ではありません。
それでも、トキの中で確かに何かが変わった瞬間でした。
夫婦として、家族として、本音を言い合う関係へ一歩踏み出した――。
そう感じさせてくれる、静かで優しい回だったと思います。
『ばけばけ』これまでのネタバレ感想記事
『ばけばけ』では、第71話以降、ヘブンとトキの関係性に少しずつ変化が描かれてきました。
あわせて読むことで、第75話の出来事がより深く理解できる回です。
第71〜74話を振り返ることで、第75話で二人が本音をぶつけ合えた意味が、よりはっきりと見えてきます。
